登山計画の立て方

登山口までのアクセス
1.車は便利である。
 トランクに登山用具、食料、着替えを放り込んで、すぐ出発できる。途中で仲間をピックアップして高速道路に乗れば、予定通りの時間に登山口に着くことができる。ガソリン代や高速道路料金を頭割りすれば、割安になる。登山口の駐車場で車中泊できるし、車にテント用具と炊事用具を積んでおけば、登山口近くのキャンプ場で前泊することができる。このように、公共機関を使う場合に比べて、マイカーを使う利便性は非常に高い。
                   
2.アクセス道路の選択
 目指す山を決めたら、高速道路と降りるインターチェンジ(IC)を決める。ICから登山口までのアクセス道路を調べる。いくつかの山を続けて登る場合には、それらを最短で結べるようなアクセス道路を調べておくことが大切である。インターネット道路地図Mapionが役に立つ。その上で、中継点を入れてカーナビを利用するのが正しい使い方である。カーナビ任せにすると、とんでもない最短の山越えの悪路に突っ込んでいくことがある。登山口に近づくと、悪路になって難渋する山も多い。大雨や台風後には土砂崩れで、不通になる場合があるので、市町村の観光課窓口に道路状況を確認すること。

3.遠距離の山は、飛行機、新幹線あるいはカーフェリーとマイカーを組合せる。
 北海道にある九つの百名山、九州と屋久島にある六つの百名山へ車で行くには、余りにも距離が遠い。飛行機あるいは飛行機にカーフェリーを組み合わせて、現地に到着してからマイカーを借りる。飛行機を利用する場合には、早割り、特割りあるいはシルバー割りに指定ホテルを1軒とレンタカーを組み合わせたパック旅行を、旅行会社に注文すると安価に行ける。その際には、レンタカーで一気に四つぐらいの百名山を続けて登る計画を立てる。例えば北海道の九つの百名山を二つに分けて登る、九州の五つの百名山を連続して登る、屋久島の宮ノ浦岳のかえりに四国の二つの百名山あるいは大山に登る、などがその例である。

4.一度にいくつの山を登るか。
 北海道、九州や東北の山に行く時には、続けて四つから五つの百名山を続けて登る。その方が、登り終えるのにかける日数も少なく、経費も安くて済ますことができる。その他にも、立山と剣岳、五竜岳と鹿島槍岳、薬師岳と黒部五郎岳、水晶岳と鷲羽岳、北岳と間ノ岳、甲斐駒ヶ岳と千丈ヶ岳、木曾駒ヶ岳と空木岳、剣山と石鎚山などがある。それに耐えれる体力をつけておくことが必要である。

5.縦走をする時は、車をどうするか。
 車で行く時には、登山口と下山口を同じくする。そのためには、周回する縦走コースを選択することになる。例えば、さわら島を登山基地にして悪沢岳から赤石岳に縦走する、易老渡を登山基地にして聖岳から光岳に縦走する、新穂高温泉を登山基地にして水晶岳から鷲羽岳に縦走する、折立を登山基地にして薬師岳から黒部五郎岳に縦走する、笹ヶ峰を登山基地にして火打岳から妙高岳に縦走するなどがある。
 どうしても登山口と下山口が数駅違う場合には、駅周辺の駐車場に車を置いて、下山後に車を取りに戻る。例えば、五竜岳と鹿島槍岳を縦走する場合である。


6.ロープウエー、スキーリフトやシャトルバスの利用

 観光用のロープウエーやスキー用のゴンドラやリフト利用すると、一気に高度を稼ぐことができる。観光用のロープウエーを利用できる例としては、大雪山、木曽駒ヶ岳、那須岳、谷川岳が有名である。スキー用のゴンドラやリフト利用できる例としては、安達太良山、奥白根山、吾妻山が知られている。
 また、一般車の乗り入れを禁止して、シャトルバスに乗り換えさせる例としては、上高地、ひうち山と至仏山、乗鞍岳がある。

登山コース
1.車でのアプローチに便利な登山口
 いくつかの登山口から、山頂への登山ルートが延びている。登山口が高速道路から近くて、道路状態が良いアクセス道路を選びたい。しかし、登山口に近づくほど道が細くなり、林道に入って行く場合が多い。でこぼこの細い悪路や、土砂崩れで不通になることの多い道路については、前もって地元市町村の観光課などに問い合わせること。現在、自分で運転せざるを得ない悪路は、皇海山の追貝ルートと根利ルート、聖岳と光岳の易老渡までの林道、恵那山の黒井沢林道、大峰山の天川村から行者還トンネル西口までの林道がある。

2.自分の力量にあった登山コース
 いくつもある登山ルートの中から、多くの登山者が歩く一般ルートを選ぼう。自分の力量を過信して、一人で難コースに挑戦するのは避ける。携帯電話が通じない山域では、アクシデントに遭うと遭難の危険がある。自分が中級者と思う人は、@単独で登山計画を立てることができる。 A単独で15kgのザックを担いで、テント泊しながら数日かけて山を縦走することができる。 B登山地図とコンパスの使用に習熟していて、道に迷っても元の道に戻ることができる。 C日帰り用の8kgのザックを担いで、1000mの標高差を休憩時間を入れて4時間内で登れること D日帰り用の8kgのザックを担いで、1日に8時間以上歩けることを基準とする。上級者に近づくためには、さらに、@春山でアイゼンをはいて、雪のついた岩場や雪渓登攀下降ができる。 Aピッケルとアイゼンを正しく使えること。 Bテント場で自炊できること。 Cルートファイティングができること。 D危険予知と回避行動ができること、Eザイルの基本操作ができること。

3.登山口に戻る周回コースの選択
 車で行く時には、登山口と下山口を同じくする。そのためには、周回する縦走コースを選択することになる。例えば、さわら島を登山基地にして悪沢岳から赤石岳に縦走する、易老渡を登山基地にして聖岳から光岳に縦走する、新穂高温泉を登山基地にして水晶岳から鷲羽岳に縦走する、折立を登山基地にして薬師岳から黒部五郎岳に縦走する、笹ヶ峰を登山基地にして火打岳から妙高岳に縦走するなどがある。

宿泊
1.日帰り登山
 歩行時間が8時間を境にして、以内の場合には日帰り登山、超える場合には山小屋に泊まるのを基準とする。夏山の場合には日暮れが遅いので、体力があれば10時間は歩くことができる。また、秋山は日暮れが早いので、15時には小屋に着けるように計画を立てる。

2.山小屋で泊まるか、テント泊にするか
 7月中旬から8月中旬までの夏山では、人気のある山の山小屋は大混雑する。また、9月の第4週から10月10日までは、紅葉がきれいといわれる山は登山者で一杯になり、眠れなくて大変な思いをすることになる。小屋近くにキャンプ場があればテント泊して、翌朝にナップザックを背負って山頂を往復後に下山する方法がある。最近のテント用品は軽量化が進み、食料、寝袋、マットなどを入れても、ザックの重量は14kgを越えない。気のあった友達とテント泊すると、楽しい思い出になるだろう。

3.登山前後の前泊と後泊
 日帰りできる山でも遠距離から出かける時には、登山口の駐車場で車中泊するかテント泊することになる。一つの山を登るだけでなく、近くにあるいくつかの山を合わせて登る計画を立てるが良い。下山後に疲れた体に鞭を打って遠距離を運転して戻るのは、居眠り運転による事故を引き起こし易い。温泉宿で疲れを癒してから戻ろう。

4.下山後に温泉を楽しむ
 山麓には、温泉があるところが多い。下山後に温泉宿に泊まってもよいし、日帰り入浴してから帰っても良い。

登山装備
1.登山行程にあった装備
 日帰り登山、小屋泊登山、テント泊登山によって、携行する登山装備は違ってくる。詳しくは、「登山装備」をご覧下さい。

2.荷物の軽量化が登山を楽にする。
 登山者の皆さんは大きなザックを使い過ぎている。私の長年の登山経験から言うと、日帰り登山ではザックは25〜30リットルで重量は7kg内、小屋泊登山ではザックは30リットルで重量は9kg内におさえることができる。また、テント泊の場合でも、ザックは40リットルあれば十分で、重量は14kgを越えない。

3.ダブルストックの使用は、登り下りを補助し疲労を軽減させる。
 私は現在73歳であるが、58歳の時にストックをダブルで使い出してから、山の登り下りが楽になった。ダブルストックを持っているが、それを上手に使っている登山者が非常に少ない。ノルジックウオーキングによる平地の歩き方をNHKで放映していた。腰の位置を高く、胸を張って、ストックを突いた腕で体を押すようにして、大股で歩く。登る時にはストックを短めに調節して、前に突いてから体を押すように歩く。下る時にはストックを長めに調節して、前に突くことによって膝への負担を和らげると同時に、体のふらつきを支える。山を歩く時には、小股で足をフラットに置くと疲れが少ないと言われるが、荷物を軽量化するとノルジックウオーキング調で軽快に歩くことができる。低山でノルジックウオーキング歩行の練習を積んで、コツを会得することを勧める。このように、ランニング、低山での速歩やトレールランニングによって日々体を鍛えて、山を速く歩ける基礎体力をつけておくことが何よりも大切である。

4.サポートタイツやひざサポーターの使用
 サポートタイツをはくと、足腰がぶれなくて歩き易いといわれているが、私はまだ使用した経験がない。一度はいて見て、効果を試して見たいと思っている。

百名山登山にかかる総経費
 北海道から屋久島にまたがる百名山を完登するには、多額の経費がかかる。多くを占めるのは交通費と宿泊費である。平生の生活費を節約して、費用を捻出しよう。百名山を目指している登山者は、麓の市町村にあるホテルや高級旅館に泊まることをよしとはしない。

1.交通費
 北海道にある九つの百名山、九州と屋久島にある六つの百名山へは、飛行機(途中からカーフェリーを混ぜて)で往復する人がほとんどだろう。飛行機の場合には、早割り、特割りあるいはシルバー割りに指定ホテルを1軒とレンタカーを組み合わせたパック旅行を、旅行会社に注文すると安価に行ける。その際には、現地でレンタカーを借りて一気に四つから五つの百名山を登る計画を立てる。例えば北海道の百名山を二つに分けて登る、九州の五つの百名山を連続して登る、屋久島の宮ノ浦岳の帰りに四国の二つの百名山あるいは大山に登る、などがその例である。
 このように近くの山を連続して登るにしても、航空料金、カーフェリー料金、レンタカー代、ガソリン代、高速道路料金を合わせて130万円位はかかる。

2.宿泊費
 山麓にある公共の宿、民宿やユースホステルを利用する。また、山麓の野営場(キャンプ場)を積極的に利用すると、宿泊費をその分だけ節約できる。山小屋の宿泊料金に昼食の弁当代を加えると、1泊が約1万円である。日帰り登山でも前後泊に1泊するとして、100万円はかかるだろう。

3.諸費用
 山への往復途中の飲食費や入浴代などの諸費用が、10万円ぐらいはかかる。

4.総経費

 交通費、宿泊費、諸費用を合わせると、240万円になる。一般的には、250万円から300万円はかかると言われている。まあ、普通乗用車を1台買う値段である。これを高いと思うか、安いと思うかは、登山者の考え方次第である。