剣岳
  関係市町村のホームページから、下記の情報を見ることができる。
立山黒部アルペンルー
The Japan Alps

アクセス:室堂(立山駅・扇沢)
別山尾根, 早月尾根, 剣沢, 欅平(水平歩道), 立山駅・欅平
山小屋 
鎖場の地図
登山ルート


アクセスと山麓の宿

車:北陸自動車道を立山ICで下り、道標に従って立山駅に着く。何か所もの無料駐車場が完備している。夏から秋にかけての週末や三連休中は立山駅から黒部湖に抜ける観光客が多く、三連休中はケーブルカーに乗るために、2-3時間待ちはざらである。混雑期には早朝に立山駅に着きたい。遠方から来る人は午後のケーブルカーに乗って、登山前日に立山周辺の宿に泊まる。
 ケーブルカーの立山駅始発は午前7時である。 美女平駅でケーブルカーを下りて、登山バスに乗り換える。美女平駅から50分で標高2435mの室堂ターミナルに着く。遅くとも午前12時までに室堂ターミナルを出発しないと、16時までに剣沢の山小屋に着くことはできない。
電車・バス:JR富山駅で降り、地鉄富山地方鉄道立山駅から電車に乗って、立山駅に着く。
山麓の宿:登山前後に山麓の宿に泊まるよりも、立山室堂から15分歩いた所にあるみくりが池温泉などに泊まる方が良い。。みくりが池温泉は、日本最高所(標高2430m)にある温泉宿として有名である。


登山地図と登山コース

 登山地図    GPC軌跡    鳥瞰図(カシミール3D,)  高低図 
 山頂直下は急峻な岩稜が続き、百名山最難関の山である。初心者は他の山で鎖場の経験を積んでから挑むこと。初心者と思われる人が鎖場で立ち往生して、渋滞を招いている。登山口の室堂までは、立山駅からと信濃大町の扇沢駅から、四つの乗り物を使って入る。室堂から剣沢までは山小屋も多く登りやすいが、山頂直下では鎖や長い鉄梯子に頼る難所が連続する。最盛期には山小屋が大変混むので、剣沢にある設備の整ったキャンプ場を利用することができる。2泊3日のゆっくりした日程を組んで、剣岳の良さを楽しみましょう。
 別山尾根の一般コースの他に、馬場島から早月尾根を登るコースがある。1900mに早月小屋があるとはいえ、標高差が2250mある上に頂上直下では、連続する鎖場を越える熟練者コースである。雪渓登攀技術を持つ人にとっては、長次郎雪渓や平蔵雪渓をコースに入れるなどのバリエーションルートをとると、剣岳の「雪と岩の殿堂」を楽しむことができる。若い時には、バリエーションルートから、5回は登っている。若い時から鎖場では鎖にセルフビレーを取って登ることはしなかったが、5年ぐらい前からはほんどの登山者はセルフビレーを取りヘルメットにかぶって登るようになった。それらを剣沢小屋や剣山荘で借りることができるか、宿泊予約時に確認すること。
鎖場の地図は剣山荘で貰えるが、上部の剣岳写真右横の鎖場の地図からコピーすることができる。
ミクリガ池から地獄谷を回って雷鳥沢へ至るルートは、火山ガスの濃度が高くなっているので、2012年の登山シーズンから通行禁止になった。ミクリガ池から尾根を下って、雷鳥沢に至る。
 私は社会人登山リーダー資格者であるが、テントを担いで仲間とあるいは単独で、別山尾根ルート、長次郎雪渓、平蔵雪渓の登下降を組み合わせて何回も登った。黒部欅平に下るも良し、逆に欅平から登るも良いが、熟練者には挑戦してほしい。


登山ガイド

アクセスと山麓の宿
 立山駅からケーブルカーを降り、登山バスに乗り換える。立山駅から1時間で標高2435mの室堂ターミナルに着く。剣岳は地元の山だけあって、バリエーションルートを含めて今回は6回目である。今回もテントを担いで自炊である。

2011年9月13日から9月15日 晴
室堂ターミナル(
11:00)――→雷鳥平(11:40,11:50)――→別山乗越

13:40,14:00)――→剣沢野営場(14:35
                         

 室堂ターミナルの屋上から広場に出ると、眼前に台形の立山が聳えている。右側が雄山、中央が最高峰の大汝山、左端が富士の折立である。
                               
 広場に湧き出る玉殿の湧水でのどを潤してから、左に延びる遊歩道から石の階段を下りると、みくりが池の湖畔に出る。湖面に映る逆さ立山がきれいである。石を敷き詰めた長い階段を下り右折すると、地獄谷に出る。石畳の遊歩道を進むと、吹き上げる噴気が幾筋も見える。噴気と湯だまりの間を足早に通り過ぎると、雷鳥平に着く。最盛期を過ぎているが、12張りのテントが並んでいる。ベンチにザックを下ろして、周りの立山やこれから登る雷鳥沢を登っている登山者を眼で追う。


 雷鳥平から浄土川を木の橋で渡り、河原に出る。室堂乗越への道を左に見送って、別山乗越まで標高差500mを登る。浮石が多いざらざらした道をジグザグに登って、最後にジグザグの急坂を登りきると、剣御前小屋が建つ別山乗越に飛び出す。眼前に剣岳の雄姿が姿を現す。山頂から右に連なる八ッ峰の稜線といくつもの谷筋を眺めながら休憩する。

 剣沢に下りるには二本のコースがある。一つはハマグリ雪渓を右に見ながら別山の山腹を下るコース(右側)と、剣御前の山腹をトラバースするコース(左側)である。右側のコースに入り、山腹から三田平を下ると、15の色とりどりのテントが張られた剣沢野営場に出る。その先には、後を石垣で守られた剣沢小屋の赤い屋根が見える。夏山シーズン中の野営場の下には、1階の小屋の中に富山県警山岳警備隊の派出所と診療所が開設されている。

 早めに野営場に着いたので、平坦な適地を確保して早速テントを張る。春山を含めて剣沢には5回も来ていて、その内、4回はテントで勝手知った場所である。冷やした缶ビールで夕映えの剣岳に乾杯して、蒸しあがったアルファ米にハヤシライスをかけ、サラダ、果物を添えて早めに食事をとる。


 夕暮れが近づき、夕焼けにより橙色の帯が下から上に上がって行き、ついに頂から消え去る。薄黒くなった頂を飽きずに眺める。また、いつか来よう。紅葉時期に、剣沢から裏剣を訪ねてみよう。池ノ平小屋や仙人小屋から見る裏剣の素晴らしさと、池ノ平小屋の雰囲気を愛する登山者によく会う。

剣御前小舎

別山乗越から見る剣岳

剣沢野営場(9月は閑散)
9月14日 晴

剣沢野営場(
6:45)―→剣山荘(7:25,7:35)―→一服剣(8:05,8:10)――→

前剣(
9:35,9:40)―→剣岳(11:45,12:15)―→前剣(14:15,14:25)――→

一服剣(
15:00,15:10)―→剣山荘(15:50,16:15)―→剣沢野営場(17:05
                       

 剣沢野営場を出発して、剣沢小屋を右に見て岩がごろごろ転がる間をぬって、剣山荘に下る。ここから山頂までの往復間に13か所の鎖場があり、その内、4か所の鎖場では登り用と下り用に分かれている。
剣山壮に寄って鎖場が書かれた用紙を貰おう。今日が小屋じまいで、剣岳に登る人は見えない。単独行になるが、勝手知った山である。登山者はカラビナを付けることによりセルフビレーを取り、ヘルメットをかぶりましょう。。剣山荘の裏から斜面を登り鎖場(1番目)を越えると、左からクロユリのコルからの道が合流する。右へ斜面を進むと、鎖場(2番目)を越えて一服剣に着く。眼前には剣岳と見間違うほどの前剣が、三角形の大きな姿を見せている。
 少し下った鞍部が武蔵のコルで、ここから目の前に立ちはだかる前剣へ250mの急なガレ場の登りが続く。落石、浮石に落石に注意しながら登りつめ、東大谷側(見上げて左側)をジグザグに登る。右にある大岩の下から鎖(3番目)につかまりながら、左上の稜線に出る。稜線に沿って右側に進み、鎖場(4番目)を越える。前剣の山頂手前で右側の登り専用登山路を進むと、すぐ山頂に飛び出す。眼前に三角形をした剣岳の岩峰が圧倒的な姿をして迫り、右下に流れる尾根と谷の上には、八ッ峰がギザギザの稜線を刻んで落ちている。



前剣登りにある大岩(鎖場3)

前剣山頂

剣沢小屋

剣山荘
 一服剣から見る前剣
 稜線を下り4mの鉄の橋を越えると、岩峰の下に出る。右基部に走るクラックに足を乗せ、鎖につかまりながらトラバース(鎖場5)後、上によじ登ってから下ると(鎖場6)、前剣の門と呼ばれる狭い鞍部に出る。ここから右に雪渓を見ながら岩屑の散らばる道をジグザグに登り、稜線を右に進むと眼前に平蔵の頭と呼ばれるスラブ状の岩壁が道をふさいでいる。

 
下山者がいない時は下り専用の鎖場12を直登する人がいるが、登り専用は岩壁の右側から回り込む(鎖場7)。鎖をつかんで岩壁に打たれた鉄のボルトに足を乗せてから、体を引き上げる。鎖につかまりながら足元の見えない崖を伝い岩峰の裏に下ると、下り専用の道と合流する。岩場を慎重にトラバースしながら進むと、登り(鎖場8)と下り(鎖場11)に分岐する。鎖をつかんで岩場をトラバース後に岩を乗り越えると(鎖場8)、平蔵のコルに下り立つ。右側からは、平蔵の雪渓が突き上げている。左正面の岩陰には、トイレがある。平蔵の雪渓を春夏に2回は単独登下降したことを思い出した。若い時には、下りにグリセードで飛ばしたことがあったな。



鎖場5手前にかかる鉄の橋

平蔵の頭の登り(鎖場7)

鎖場11(下り専用)

平蔵の頭から見る剣岳

平蔵谷 
 岩壁に書かれた「剣岳」、「山頂」の矢印に従って、20mぐらい下がってから左側の「カニのたてばい」と呼ばれる高さ70mほどの登り専用の岩壁(鎖場9)に取りつく。鎖を左手でつかみ岩壁に打ってある鉄のボルトに足をかけ、最初の一歩を踏み出す。傾斜は登り始めは強いが、途中で少し緩み、垂直な岩場を必死に登り、最後に鉄のボルトに足をかけて狭い岩棚によじ登る。傾斜は平均で80度ぐらいであるが、足を置く岩の窪みや出っ張りはしっかりついているし、鎖も所々にボルトを打って全体に張られている。鎖場を登る際には、左手に鎖を持ち、右手で岩の出っ張りをつかみながら足を引き上げる、いわゆる三点支持を心がける。岩棚から左手に鎖を掴みながら、右上へ大岩の間を通り抜けると、危険個所を過ぎる。下山専用の「カニノよこばい」の合流点を越えて、ガレ場から稜線に出て左側から山頂に向かう。



カニのたてばいの上部から見下ろす

カニのたてばいから山頂への岩溝

 カニのたてばい(鎖場9)

カニのたてばい(鎖場9)の鉄のボルト
 山頂からは後立山連峰や南アルプスの山々の他に、視界が良い時には富山湾の向こうに能登半島が見通せるが、今日は霧がかかり始めた。山頂の祠から5mほど右側に、映画「点の記」で有名になった三等三角点が埋設されている。2007年に国土地理院により標高が再測定されたが、2999mと3000m峰に参加できなかったのは残念である。しかし、この百名山最難関の山に登頂できた満足感は圧倒的に大きい(10回以上登頂)。三角点を先に進むと長次郎雪渓の最上部に下り立つが、一般登山客は進入禁止の×印が岩に書かれている。春夏の長次郎雪渓も3回は単独登下降したことがある。山頂の祠は落雷の際に壊れたが、知人により今は修復されている。

山頂の祠

三角点

八ッ峰
 山頂から稜線を少し下った所にある木柱の標識を右に下ると、早月尾根に至る。それを見送ってガラ場を下ると、岩に「カニのよこばい」と書かれた下り専用の難所に入る。鎖(鎖場10)をつかんで岩場を下り、「カニのよこばい」と言われるバンド(狭い岩棚)に足場を確認しながら下り立つ。鎖をつかみながら横にそろそろと進む(その様をカニのヨコバイという)。そこから鎖をつかんで下りる際に、足場がないと焦る人がいて渋滞になる場所だが、鎖をつかんで右足を先に置くと左足を置く足場が左下にあるので大丈夫。間もなく金属製の梯子の上部に出る。以前は1段目に乗り移るのが怖かったが、今は最上部に足を置く金属の板が張られている。そこに乗り移ってから、足場を手に持ちながら長い鉄梯子を慎重に下る。右の東大谷側が切れ落ちており、身がすくむ。下りきったところにある鎖につかまって、再び平蔵のコルに下り立つ。

 これから先、三か所に下り専用の鎖場がある。平蔵の頭の鎖場11(右矢印)を登り、平蔵の頭から急な岩稜のバンドを下る(鎖場12)。稜線上のケルンから左に斜面を下り続けると、正面に前剣の門と言われる狭い鞍部に着く。立ちはだかる大岩を、鎖につかまって乗り越える(鎖場13)。前剣の山頂下をトラバースし、稜線を乗越してから稜線に沿って進み、鎖場4を過ぎて一度稜線に出る。


カニのよこばいの下のハシゴ

平蔵の頭の下り専用(鎖場12)
 
 そこから左下広大ながレ場の斜面を下る。大岩につけられた鎖場3を通過して、ガレ場に足をとられないように注意しながら下る。
前剣の門から武蔵のコルまでの下山時に、事故が多発している。武蔵のコルから一服剣に登りかえし、剣山荘で休憩をとる。後はのんびりと、剣沢小屋を経て剣沢野営場に戻る。長い距離を歩いたわけではないが、こんなに疲れたのは久しぶりである。

カニのよこばい分岐

カニのよこばい
9月15日 晴
剣沢野営場(
10:40)―→別山乗越(11:45,12:00)―→新室堂乗越

13:10,13:20)―→雷鳥平(13:40,13:55)――→ミクリガ池(14:30,14:40

――→室堂ターミナル(
14:55
               

 剣沢野営場から、往路を別山乗越まで戻る。2日目に剣山荘に泊まった人は、剣御前の山腹をトラバースして別山乗越に戻る方が近い。この剣御前のトラバース道は、7月には雪渓を横切るのでスリップには気をつけたい。

 
 往路とは違って、別山乗越から奥大日岳方面に向かう尾根を、新室堂乗越まで戻る。2500mから稜線を20m下って稜線に沿って歩くようになるが、稜線から雷鳥沢にかけてのの斜面は枯れたチングルマの大群落である。夏に歩いたらお花畑の中を歩くことになり、素晴らしいことだろう。

 剣岳の雄姿に別れを告げて、雷鳥平に下る。雷鳥沢の登山道にくらべて歩く人も少ない穴場である。広大な室堂平を見下ろしながら雷鳥沢に着く。後は、地獄谷とミクリガ池に寄ってから、室堂ターミナルに戻る。そこから、関西方面に戻る人は立山駅へ、関東方面に戻る人は信濃大町扇沢に戻ることができる。剣沢野営場を9時までに出発すれば、大阪や東京にその日の内に着くことができる。


新室堂乗越へ

新室堂乗越のチングルマ